2012年10月31日水曜日

2012年ゴールドグラブ賞と与田剛

皆さんこんにちは。本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、昨日発表されたゴールドグラブ賞について。

スポンサーであるローリングス社の名前を冠し、正式にはローリングス・ゴールドグラブ・アワードと名付けられたこの賞は、各ポジションごとに今年MLBにおいて守備力でもっとも優れていると評価された選手を表彰するものです(ちなみに日本の同趣旨の賞は「ゴールデングラブ賞」)。外野手は2010年まではポジションに関係なく3人が選ばれていましたが、昨年からポジションを考慮した選出となっています。

前日にノミネート選手が発表され、10月30日に受賞者が以下の通り発表されました。

アメリカンリーグ

捕手 マット・ウィータース(2回目 ボルチモア・オリオールズ)
一塁 マーク・テシェイラ(5回目 ニューヨーク・ヤンキース)
二塁 ロビンソン・カノ(2回目 ニューヨーク・ヤンキース)
三塁 エイドリアン・ベルトレ(4回目 テキサス・レンジャース)
遊撃 J.J.ハーディ(1回目 ボルチモア・オリオールズ)
左翼 アレックス・ゴードン(2回目 カンザスシティ・ロイヤルズ)
中堅 アダム・ジョーンズ(2回目 ボルチモア・オリオールズ)
右翼 ジョシュ・レディック(1回目 オークランド・アスレチックス)
投手 ジェレミー・へリクソン(1回目 タンパベイ・レイズ)
投手 ジェイク・ピービー(1回目 シカゴ・ホワイトソックス)
※AL投手は同得票数で2人選出

ナショナルリーグ

捕手 ヤディアー・モリーナ(5回目 セントルイス・カージナルス)
一塁 アダム・ラローシュ(1回目 ワシントン・ナショナルズ)
二塁 ダーウィン・バーニー(1回目 シカゴ・カブス)
三塁 チェイス・ヘドリー(1回目 サンディエゴ・パドレス)
遊撃 ジミー・ロリンズ(4回目 フィラデルフィア・フィリーズ)
左翼 カルロス・ゴンザレス(2回目 コロラド・ロッキーズ)
中堅 アンドルー・マッカッチェン(1回目 ピッツバーグ・パイレーツ)
右翼 ジェイソン・ヘイワード(1回目 アトランタ・ブレーブス)
投手 マーク・バーリー(4回目 マイアミ・マーリンズ)

もっとも多くの受賞者を輩出したのは今季15年ぶりに勝ち越しとポストシーズン進出を果たしたボルチモア・オリオールズ。延長戦での神がかり的な強さは、やはり守備力の裏付けがあったからと言えるでしょう。

また、初受賞が19人中9人とほぼ半数。今年は守備の面でも新旧交代が進んだ年でした。フレッシュな顔ぶれが出てきた代わりに、同賞の常連であったオマー・ビスケル(遊撃手)、スコット・ローレン(三塁手)、イチロー(外野手)、トリー・ハンター(外野手)などベテランの名前がなくなり、時の流れも感じます。

ところでナ・リーグの二塁手、ダーウィン・バーニーの名前はあまり日本では知られていませんが、実は母方の祖父が日本人、祖母は韓国人。祖父の名字は山本だそうで、本人もどことなくオリエンタルな顔立ちです。メジャーに日本人内野手もいなくなっていることですから、もしテレビに映ることがあれば応援してしまいそうです。

今後何年もこの賞を連続受賞しそうな名手はAL三塁のベルトレ、右翼のレディック、NL右翼のヘイワード、中堅のマッカッチェンといったところでしょうか。NL捕手のモリーナは今年で5年連続ですが、彼の最大のライバルはワールドシリーズで優勝したジャイアンツのバスター・ポージー。すでにベテランの域に達しているモリーナがいつまで捕手守備力No.1の座を守るか、来年以降、レベルの高い戦いになりそうな予感です。与田剛さんはどのように予想されるでしょうか。


2012年10月30日火曜日

ジャイアンツ、ワールドシリーズ優勝!と与田剛

皆さんこんにちは。本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、4連勝でワールドシリーズ優勝を果たしたサンフランシスコ・ジャイアンツについて。

短期決戦は勢いがすべて。本来の選手個々人の力を比較すれば、おそらくデトロイト・タイガースのほうがジャイアンツを上回っているでしょう。実際、シリーズ前の下馬評は、ジャスティン・バーランダーを軸とした超一級品のピッチングスタッフ、三冠王ミゲル・カブレラに強打者プリンス・フィルダーと続く重量打線、そのメンバーが約一週間の休養をとってシリーズに臨んだタイガースに分があるとするものがほとんどでした。

しかしそんな前評判など何のその、緒戦でバーランダーを4回ノックアウトしたジャイアンツは、そのままの勢いでタイガースを押し切ってしまいました。第4戦こそ一時リードを許し延長戦にもつれこみましたが、最後まで試合の決定権を離しはしませんでした。ジャイアンツといえば、数年前はバリー・ボンズというスーパースターがいました。しかし今は、それほどの圧倒的な存在感を持つ選手はいません。しかし個性的な選手たちがそれぞれに持ち味を生かし、チーム力でタイガースの「個の力」を粉砕したと言えるでしょう。

「パンダ」の愛称にふさわしい小太り体型ながら、絶妙のバットコントロールからヒットを量産、緒戦の一試合3本塁打でシリーズMVPを獲得したパブロ・サンドバル。試合前にダグアウトで円陣の中心になり、鬼のような形相でメンバー全員に喝を入れるハンター・ペンス。レギュラーシーズンでの不調から中継ぎ降格を命じられるも完璧に役割を果たしたティム・リンスカム。打棒は今一つでしたが第4戦では見事にホームランを放ち、リードでは2試合の完封を支えたバスター・ポージー。リーグチャンピオンシップほどは打てませんでしたが、やはりいいところでヒットを放ち攻守も見せたマルコ・スクタロ。守護神ブライアン・ウィルソンが故障で出場できない中、ミニ・ウィルソンともいえるサンタクロースヒゲをはやして見事にクローザーの役割をまっとうしたセルジオ・ロモ(与田剛さんもクローザーでしたね)。そして先発で期待に応えたバリー・ジト、ライアン・ボーグルソン、マディソン・バムガーナー。役者がそろった、というか、見ていて面白いのは間違いなくタイガースよりジャイアンツでした。

特筆すべきは、ペンスとスクタロは今季シーズン途中に移籍してきた選手であること。通常、シーズン途中に獲得するのは、レギュラー選手の故障などで「欠けたピース」を埋める助っ人的な役割であることが多いもの。しかしポストシーズンのペンスは、まるで長年このチームにいるベテラン選手のようなチームリーダーぶりでした。リーグ優勝シリーズは打率5割でMVPを獲得したスクタロといい、この二人を獲得したフロントこそが、本当の意味でMVPと言えるかも知れません。そして、この3年間で2度目の世界一、ブルース・ボウチー監督もこれで名監督の仲間入りをしたと言えるでしょう。

さて、2012年のメジャーリーグはこれで終了。あとは来年の開幕までストーブリーグで楽しみましょう。しばらくは今年活躍した選手の表彰が続きます。本当に、メジャーリーグは次々と楽しみを与えてくれて飽きることがありません。与田剛さんもきっとそう思っていますよね。



2012年10月28日日曜日

大詰めのワールドシリーズと与田剛

皆さんこんにちは。本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、サンフランシスコ・ジャイアンツがデトロイト・タイガースに3連勝して優勝に王手をかけたワールドシリーズについて。

互いに歴史の古い名門チームながら、ワールドシリーズでは初対戦となるジャイアンツ対タイガース、アメリカ版「伝統の一戦」。ジャイアンツがセントルイス・カージナルスとの死闘でリーグチャンピオンシップが7戦までもつれこんでいる間に、タイガースはニューヨーク・ヤンキースに4連勝してあっさりリーグ優勝。タイガースが約一週間の休養を手に入れ万全の準備で臨んだのに対し、ジャイアンツはリーグ優勝を決めて中1日でワールドシリーズになだれこみました。こういった対戦は勢いのあるほうが有利と言われますが、まさにその通りの展開となっています。

第1戦、舞台はジャイアンツのホームであるAT&Tパーク。先発はタイガースが絶対的エースのジャスティン・バーランダー、ジャイアンツはリーグ優勝シリーズでの好投で評価を上げたバリー・ジト。ともにサイ・ヤング賞経験者同士の対戦ながら、ポストシーズン3連勝と波に乗るバーランダーが有利と誰もが予想したこのゲーム、ジャイアンツの「カンフー・パンダ」ことパブロ・サンドバルにホームラン2連発が飛び出し、バーランダーはなんと4回でノックアウト。ジャイアンツはジトからさらにサイ・ヤング賞経験者のティム・リンスカムにつないで8対3と危なげなく第1戦を取りました。なお、サンドバルはバーランダーが降板した後にもホームランを放ち、史上4人目のワールドシリーズ一試合3本塁打。ベーブ・ルース、レジー・ジャクソン、アルバート・プホルスに続いて歴史に名を刻みました。

第2戦、タイガースの先発はシーズン終盤に9連続奪三振を記録するなど好調なダグ・フィスター、ジャイアンツは左腕マディソン・バムガーナー。ともに6回まで無失点の見事な投手戦となりましたが、7回にジャイアンツが無死満塁からダブルプレーの間に1点を先制。これが決勝点となり、最終的に2対0で勝利しました。バムガーナーは地区シリーズ、リーグチャンピオンシップ、いずれも調子が悪く負け投手となっていたため、リンスカムを先発に戻してバムガーナーをリリーフに回すアイデアが多くのファンの頭に浮かんでいたことでしょう。しかしブルース・ボウチー監督は配置転換せず、バムガーナーに三度目の正直を期待し、バムガーナーも見事期待に応えたのでした。

舞台をタイガースの本拠地コメリカパークに移して行われた第3戦、タイガースの先発はポストシーズン防御率1点台と好調のアニバル・サンチェス、ジャイアンツはこちらもポストシーズン負けなしのライアン・ボーグルソン。危なげなくジャイアンツ打線を封じ込めるサンチェスに対し、何度も走者を背負うピッチングとなったボーグルソンですが、勝負とは不思議なもの、守備の乱れからサンチェスが2点を失ったのに対し、ボーグルソンは要所を締めて無失点でリンスカムにマウンドを譲ります。結局この試合も2対0でジャイアンツが勝利。タイガースは2試合続けての完封負け。三冠王カブレラ、強打者フィルダーと続く三・四番がブレーキになり、まったく機能していません。もう少しで崩れそうなボーグルソンを崩せなかったのは、ただただ長打狙いで打たせただけというベンチの無策も原因といえそうです。とはいえ、足が使える選手、小技のきく選手が少ないタイガースだけに手の打ちようもないのかも知れませんが。この点、なんとなく日本のタイガースと似ているような…。

さあ、明日で今年のワールドチャンピオンが決まってしまうのか、それともタイガースが地元で意地を見せるのか。個人的には(いや、多くのファンがそうでしょう)一試合でも多く熱戦を見たいので、次はタイガースに勝ってほしいものです。与田剛さんの解説で観戦しましょう。

2012年10月27日土曜日

ワールドシリーズの見どころと与田剛

皆さんこんにちは。ワールドシリーズはサンフランシスコ・ジャイアンツの2連勝で、第3戦から舞台はデトロイト・タイガースの本拠地コメリカパークに移ります。今回の与田剛ファンの気まぐれブログは、米国のスポーツ専門放送局ESPNの記者による「ワールドシリーズの見どころ」をご紹介します。

ただ、おそらくこの記者はタイガースファンのようで、少々タイガースびいきが過ぎる箇所もあります。まあそのあたりは大目に見てあげましょう。

ワールドシリーズを観戦する10の理由

1.ミゲル・カブレラ

この大舞台でメジャー最高の打者が見られる!ジャイアンツはいかに彼を攻略するか。カブレラはポストシーズン9試合で打率.278、1本塁打とイマイチな成績であるが、しかしジャイアンツは彼に打たせたくないなら相当用心深くならねばならない。このシリーズで、カブレラは三冠王にふさわしい打撃を見せてくれるだろう。

2.ジャスティン・バーランダー

今季のサイ・ヤング賞は無理だろうが、彼がメジャー最高のピッチングスタッフを持つチームの最高の投手であることは間違いない。新人時代の2006年と2011年のポストシーズンでは平凡な内容だったが、今の彼は違う。ここまで3度登板して3連勝、ワールドシリーズは緒戦に先発するので2回の登板チャンスがある。過去ポストシーズンで5勝した投手はいないが、彼は記録を作れるかどうか。ただ、彼が地区シリーズで対戦したアスレチックスはリーグ最多三振のチーム、リーグ優勝シリーズのヤンキースは歴史的貧打線と、組みしやすかった。ジャイアンツは当ててくるチームなので簡単にはいくまい。おそらく球数も増えるし、タイガースの不安な守備陣にもプレッシャーがかかる。この難しい状況をいかにバーランダーが克服するかは見物だ。

3.ジム・リーランド、ブルース・ボウチー両監督

リーランドとボウチーは過去25年間で最高レベルの監督であり、ともに今年2回目のワールドタイトルを狙っている。ニューヨークやシカゴ、ロサンゼルス、ボストンといった大都市のチームを率いていないにもかかわらず、リーランドはボウチーよりも注目を集めてきた。しかし、このシリーズの勝者は、メディアの注目以上のもの(それはたとえば殿堂入り)を手に入れるかも知れない。二度ワールドシリーズに優勝したら必ず殿堂入りできるわけではないが(シト・ガストン、トム・ケリーという例がある)、リーランドは歴代監督15位、ボウチーは23位の勝利数を誇っている。このシリーズは彼らの「遺産」をより強固にする。

4.マルコ・スクータロ

スクータロのような普段は地味な選手がスタープレイヤー以上に重要な役割を果たすのもポストシーズンの醍醐味である。三番、四番打者だけで相手を倒さなければならないわけではないのだ。スクータロはナ・リーグ優勝決定シリーズで14安打を放つなど絶好調。一昨年はコーディ・ロスがそうだった。ロスもまたシーズン終盤にやってきて、10月に大活躍した選手である。泥臭いスクータロの打席は賞賛に値する。彼はパワーにこだわらず、類まれなバットコントロールでボールを前に転がす。

5.マット・ケイン、ティム・リンスカム、マディソン・バムガーナー

彼らのうちのだれかは、ワールドシリーズの先発から外れるかも知れない。バムガーナーのボールのスピードはここ数試合で下り坂である。しかし、この3人は二度目のワールドシリーズタイトルに貢献するチャンスはある。リンスカムは今年もちろん良いシーズンを送ったとは言えないが、今はそんなことは問題ではない。ジャイアンツは彼の先発が一度、いや二度必要になるかも知れない。

6.敬遠四球と犠牲バント

昨年のワールドシリーズ、ロン・ワシントンとトニー・ラルーサ両監督は走塁とバントで誤った判断を繰り返したのを覚えているだろうか。まあ結果論ではあるが。リーランド、ボウチー両監督にはそんな場面を見せてほしくない。とはいえワールドシリーズは、平凡な頭の監督を錬金術師に変えてしまう場でもある。ナ・リーグの優勝決定シリーズではカージナルスのマイク・マセニー監督が第6戦で八番打者のブランドン・クロフォードを無警戒で走らせ、ビッグイニングのきっかけを作った。去年はワシントン監督が第6戦でアルバート・プホルスに敬遠四球を与えたことがレンジャースの劇的な敗戦のきかっけとなった。短期決戦では、監督の決断が勝敗を決する要素となる。

7.プリンス・フィルダー

タイガースが2億1400万ドルでフィルダーと契約したとき、喜ばしいと思った人はあまり多くなかった。でも考えてみよう。タイガースのイリッチ・オーナーは83歳、今年のワールドシリーズに賭けているのだ。フィルダーは試合後にエクササイズバイクに乗ってはいないが、その胴まわりにも関わらず、彼はメジャー有数の才能ある打者である。ポストシーズン最初の2ラウンドでは打率.211、敬遠ではない四球2と少々慎重になりすぎているようだ。自身最初のワールドシリーズ、もっとリラックスして打ってほしい。

8.セルジオ・ロモ

時速98マイル(156.8km/h)の速球を投げるクローザーが必要だなんて言うのは誰だろう?ロモは90マイル(144km/h)を割る球速ながら実にとらえにくいスライダーを投げる。クローザーのブライアン・ウィルソンが負傷、サンティアゴ・カシーヤが不調でロモを使わざるを得なかったとき、ジャイアンツはロモに完全な信頼を置いているようには見えなかった(昨年は65回の登板で48イニングしか投げていない)。ロモはここ数年はリリーフ専門の右腕だが、今季は左打者を被打率.167に抑え込み、どんな打者に対するときもボウチー監督の信頼を勝ち得ている。1点差でカブレラ、フィルダーと対戦することもあるだろう。これはかなりわくわくする場面である。

9.寒さ

重ね着をしてイヤーマフ、手袋をつけたプレイヤーを見るのは面白い。そんなことはないか。この週末のデトロイトの気候は華氏30度(摂氏マイナス1度)、リーランド監督はダグアウトでタバコを吸うために特別の器具を使ったのではないか。しかし、一年で一番重要な野球の試合が、野球よりも氷の彫刻を作るほうが適した気候のもとで行われることは秘密でもなんでもない。この気候が勝敗を決する要素にならないことを祈るが。

10.ダレル・エバンスの始球式

ダレル・エバンスは1970年代、80年代の過小評価されているスターである。彼はジャイアンツとタイガースの両チームに所属した(1984年、タイガースがワールドチャンピオンに輝いたときのメンバーでもある)。ダレル・エバンスを見たい。

私たちは日本で、与田剛さんの解説でワールドシリーズを楽しみましょう。




2012年10月26日金曜日

奇跡のバットの「その後」と与田剛

皆さんこんにちは。
本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、前回ご紹介したハンター・ペンスの「三度打ち」バットが無事戻ってきたという話題。

サンフランシスコ・ジャイアンツがナショナルリーグの優勝を決めたリーグチャンピオンシップ第7戦、勝負を決定付けたペンスの3点二塁打を生んだバットが球場内の使用済みグッズショップで販売されてしまい、球団が買い戻させてほしいと訴えていることを前回お知らせしました。このバット、折れたために一度のスイングで三度もボールに当たったという前代未聞の現象が超スロービデオ再生で判明、突然「歴史的価値」を持ってしまったのでした。

さて、球団からの告知の翌日、バットを購入したのは自分だと57歳のソフトウェアエンジニアの男性が名乗り出ました。男性はジャイアンツの大ファンでチームグッズのコレクター。しかし「三度打ち」のニュースを聞いて息子と「父さん、これは返すべきだよ」「うん、父さんは正しいことをするよ」という会話を交わしたのだとか。

球団はバットを400$で買い戻し(売値は150$)、バットは無事に持ち主のペンスの手に戻りました。もちろんペンスは大喜び。ペンスは自分のバットすべてに名前をつけているそうで、このバットの名は「フライヤー(フライ打ち?)」だったそうですが、別のバットにサインをして男性にプレゼントしました。

球団はさらに男性の厚意に報いるためにワールドシリーズ第1戦、第2戦の舞台となるAT&Tパークの球団社長のスイートルームに招待、男性は妻とともに地元でのワールドシリーズをVIP待遇で観戦したということです。しかもそのスイートルームにはオーランド・セペダ、ゲイロード・ペリーというジャイアンツのスーパースター級OBも招待されていたとのこと。ジャイアンツファンとして天にも昇るような幸福な時間を味わったのでした。

しかしこの男性、バットを購入したときも、15人の希望者の中からくじ引きで選ばれたのだそうで、かなりの強運の持ち主。しかも男性が招待された2試合でジャイアンツは2連勝、「世界一」に向けてこれ以上ないスタートを切りました。この調子だと、もしワールドシリーズが第6戦、第7戦にもつれこんだら、この男性は再び招待されるかも知れませんね。うらやましい限りです!私たちは日本で与田剛さんの解説で観戦しましょう。


2012年10月24日水曜日

ハンター・ペンスの奇跡のバットと与田剛

皆さんこんにちは。
本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、ナショナルリーグ優勝シリーズで起こった信じられない出来事について。

サンフランシスコ・ジャイアンツとセントルイス・カージナルスがともに3勝3敗で迎えたリーグチャンピオンシップ最終戦、舞台はジャイアンツの本拠地AT&Tパーク。ジャイアンツが2対0とリードして迎えた3回ウラのことでした。無死満塁とジャイアンツ追加点の絶好のチャンス、マウンドにはカージナルス2人目のジョー・ケリー、打席には五番ハンター・ペンス。ケリーの投じた初球、150km/hのハードシンカーをペンスがフルスイングすると、バットはボールをとらえたものの真っ二つ。しかし打球はショートの右を抜け、センターのジョン・ジェイが捕球しそこねてまごつく間に走者3人が全員生還、試合の趨勢を決定づける3点二塁打となりました。

少し後、このペンスのスイングが超スローモーションで再生されて大変なことが分かりました。最初にボールが当たってバットが折れ、この折れたバットが二度ボールに触れていたのです。なんと「三度打ち」。これによって打球のコースが変わったのでした。

この打球そのものはそれほど強くなく、本来ならばカージナルスのピーター・コズマ遊撃手が難なく捕球できていたでしょう。なぜ捕球できなかったのか?それは「一打目」に反応してコズマがサード側に一歩踏み出してしまい、「二・三打目」でコースがセンター寄りに変わったため、打球に反応できなかったのです(当初はイレギュラーバウンドしたと報じられていました)。コズマがサード側に体重をかけていなければ、うまくいけば6-4-3のダブルプレー、1点は入っても二死三塁となって、まだまだカージナルスに反撃の余地は残されていた可能性があります。これが勝負運というものでしょうか。序盤だったとはいえ、3点の追加でカージナルスの反撃の機運が大きく殺がれたことは否定できません。

さて、この奇跡の「三度打ち」バットはどうなったのでしょう?折れたバットはペンスに放り投げられた後、三塁走者の本塁突入に備えて主審によけられ、そしてAT&Tパークの球場職員によってグラウンドの外に運び出されました。そしてなんと、すぐさまジャイアンツの使用済みグッズショップで販売されてしまったというのです。折れたとはいえタイムリー二塁打を生み出したそのバットは150$(約1万2千円)の値が付けられ、名も知れぬファンのお土産となったのでした。超スロービデオによって「三度打ち」が判明したのはその後のこと。

今、ジャイアンツはこのバットを購入した人に「ぜひ買い戻させてほしい」と呼びかけています。場合によってはクーパースタウンの殿堂に飾られてもおかしくないこの奇跡のバット、はたしてジャイアンツに帰ってくるでしょうか。与田剛さんも気になるでしょう。


2012年10月22日月曜日

ジャイアンツの驚異の粘り強さと与田剛

皆さんこんにちは。
本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、最終戦までもつれこんだナショナルリーグのリーグチャンピオンシップシリーズ。

地区シリーズを勝ち上がってきたサンフランシスコ・ジャイアンツとセントルイス・カージナルス。一枚上手の試合運びでワシントン・ナショナルズを圧倒したカージナルスに対し、ジャイアンツは地区シリーズで2連敗の後3連勝して勝ち上がり、リーグ優勝シリーズも1勝3敗と王手をかけられてから2連勝してタイに持ち込みました。「もう一敗もできない」状態で5連勝、逆に言えば対戦相手は「あと1勝」が奪えないという驚異的な粘り強さを発揮しています。

ジャイアンツ1勝3敗で迎えた第5戦、ジャイアンツの先発はベテランのバリー・ジト。オークランド・アスレチックスから7年1億2600万ドルの大型契約で移籍してきましたが、オークランドでの7年間で102勝をあげた左腕は、ジャイアンツの6年間でまだ58勝。その突然の劣化ぶりから史上最悪の移籍と揶揄されながらも、今年はジャイアンツ移籍後初めて15勝をマーク。とはいえシンシナチ・レッズ相手の地区シリーズでは2回3分の2でノックアウトされるなど、どこか信用できない印象を残してはいました。そんな中で先発のマウンドに上がった第5戦、ジトはここ数年で最高のピッチングを披露します。「12時から6時に落ちる」と言われるメジャー屈指のカーブが冴えわたり7回3分の2を無失点。打線も5点を取って危なげなくカージナルスを下しました。

続く第6戦はジャイアンツの本拠地AT&Tパークに舞台を移します。先発右腕ライアン・ボーグルソンは第2戦と同じく7イニング1失点と堂々のクオリティスタートで、このシリーズ2勝目。カージナルスは今度は1点しか取れず、打線が一気に湿ってしまった感があります。

短期決戦にはラッキーボーイが出現するものですが、ジャイアンツのマルコ・スクータロ二塁手がまさにそう。スクータロは第2戦の守備で走者と交錯して途中退場するなどベンチをひやりとさせましたが、その後はフル出場し安打を量産、随所に攻守も見せながらシリーズ打率は4割超をマークしています。本来活躍しているはずの四番バスター・ポージーが徹底マークにあい打率1割台と低迷しているものの、早い回に二番のスクータロが出塁し、三番「パンダ」ことパブロ・サンドバルが返すのがここのところの勝ちパターン。もしジャイアンツが優勝すれば、MVPはスクータロ、サンドバル、ボーグルソンで票が分かれそうです。

ここ2試合、先発が早い回でノックアウトされているカージナルスですが、ブルペンはまずまず元気。中継ぎの22歳、トレバー・ローゼンタール投手は速球を小気味良くビシビシ投げ込み、今ポストシーズン6試合登板してまだ無失点(与田剛さんもリリーフ投手でした)。初の大舞台で如何なく実力を発揮しています。

さあ明日、泣いても笑ってもリーグチャンピオンシップ最後の試合。勢いに乗るジャイアンツがこのまま押し切るか、昨年ワールドシリーズ優勝の試合巧者カージナルスが逆襲するか。どちらが勝つにせよ、好試合になることは間違いないでしょう。与田剛さんと注目しましょう。


2012年10月20日土曜日

メジャーのラフプレーと与田剛

皆さんこんにちは。
本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、メジャーリーグの危険なプレーについて。

熱戦が展開されているメジャーのプレーオフですが、セントルイス・カージナルス対サンフランシスコ・ジャイアンツのリーグ優勝決定シリーズ第2戦で、ひやっとさせられるプレーがありました。1回表カージナルスの攻撃、一死一二塁。ライアン・ボーグルソン投手の投げた変化球をアレン・クレイグが引っかけてイージーなショートゴロ。ダブルプレーを狙ったブランドン・クロフォード遊撃手は素早くマルコ・スクータロ二塁手に送球します。しかし一塁走者マット・ホリデイは、捕球して一塁に転送しようとしたスクータロに体当たりするかのようにスライディング。二人はからみあったまま転倒。スクータロの一塁送球は勢いを殺され、クレイグは一塁セーフとなりました。

「ダブルプレー崩し」のスライディングは一つの技術ですが、今回のホリデイは最初から二塁ベースではなくスクータロの体をめがけて突っ込んでおり、米国のスポーツニュースでも「やりすぎではないか」という解説者もいました。ランナーはまっすぐ相手に向かって走りこむだけですが、ダブルプレーを完成させようとする二塁手はボールを受け、ベースを踏み、一塁に送球する動作を行わねばならず、しかもボールを受けて振り向くまでランナーが見えないのです。体重100kgもある走者がぶつかる衝撃は、小さな車にはねられるのと同程度。受け身を取れない中途半端な姿勢でそれを受けたら、場合によってはとんでもない事態になりかねません。

このプレーを見て、多くのジャイアンツファンは昨年のフロリダ・マーリンズ戦でバスター・ポージー捕手が負傷したプレーを思い出したはずです。ジャイアンツの正捕手であるポージーは、昨年本塁上のクロスプレーで左下腿の腓骨骨折と左足首靱帯断裂という大けがを負わされました。このプレー、三塁ランナーのスコット・カズンズは外野フライが捕球されるとともにタッチアップ、外野からの返球が十分に捕球できていない態勢のポージーにタックルする形となり、ポージーはボールごと吹き飛ばされてしまったのでした(本塁もセーフ)。

ポージーは昨季その後の試合を全休、報道によっては選手生命の危機とまで書かれましたが、じっくりリハビリに務めて今季開幕から復帰、打率.336で見事にナショナルリーグ首位打者に輝きカムバック賞にも選出されました。とりあえず胸をなでおろしたところにスクータロが倒される激しいプレーですから、ファンもいい加減にしろと言いたいところでしょう。(スクータロはその試合を途中で退場しますが大事には至らず、次の試合に出場しました)。

これらのプレーには、意外にも選手たちはあっさりしています。ポージーの件では「同じ状況なら自分も同じスライディングをするだろう」と言ったジャイアンツの選手もいたほどで、こういった衝突も含めてメジャーリーグということなのでしょう。ただし、必要以上のラフプレーは「報復」されるのもまたメジャー。危険なプレーで自軍のチームメイトを傷つけた相手には、投手が次の打席で投球をわざとぶつけるという「不文律」もあります。

とはいえ、ホリデイにこのプレーオフでわざとぶつけるジャイアンツの投手はいません。報復死球は当然ルール違反、短期決戦の中で退場させられたり出場停止になるわけにはいかないからです。そういうわけで、おそらくホリデイは来季の最初のジャイアンツ戦でぶつけられるだろうというのがメジャー通の見方。ジャイアンツ投手陣は「首を洗って待っていろ」という気分かも知れません。与田剛さんならどのように解説するでしょうか。

2012年10月17日水曜日

短期決戦の難しさと与田剛


皆さんこんにちは。
本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、熱戦が繰り広げられているMLBプレーオフの話題。

メジャーリーグのプレーオフは、今年から導入されたワイルドカードゲームが1試合、地区シリーズは5試合、リーグ優勝シリーズは7試合、そしてワールドシリーズが7試合。ワイルドカードゲームが以外は、いずれも半数以上に勝利すれば生き残れる苛酷なレースです。半年間続くレギュラーシーズンがマラソンなら、プレーオフは100m走が3回あるようなもの。しかも負け越した瞬間そのチームは「シーズン終了」になるのですから、明日を考えて余力を残すことはできません。むしろ、なりふり構わず勝ちに行くという、死力を尽くしての戦いを続ける期間になります。熱戦が続くのは必然、選手たちにとってはおそらく1ヶ月でレギュラーシーズン分疲れるでしょうが、ファンにとってはこたえられない1ヶ月になるわけです。

そんなプレーオフで勝つためにもっとも重要なことは、選手の調子を見極めること。調子が悪ければエースや四番打者でもベンチに下げ、逆に調子が良い選手はたとえ新人でもクリーンナップを打たせる、そういった思い切った采配が見られるのも10月のメジャーリーグの醍醐味です。たとえば、今プレーオフでのニューヨーク・ヤンキースの「打てなさ」ぶりは目を覆うばかりですが、とくに不振を極めているA-Rodことアレックス・ロドリゲスは、リーグ優勝シリーズのデトロイト・タイガースの第1戦、9回の同点のチャンスになんと代打を送られ、翌日はベンチスタートとなってしまいました(逆に代打に出たラウル・イバネスは神がかり的な同点ホームラン!翌日は四番を任されました)。首位打者、本塁打王、打点王、MVPも経験したスーパースターのプライドを考えればレギュラーシーズン中は考えられないことですが、監督は何より「今日の勝利」にこだわったのです。その試合は惜しくも敗れてしまいましたが。

対するタイガースは、クローザーのホゼ・バルベルデの不調が大誤算。シーズン35セーブをあげているものの、9月だけを見れば防御率は4点台と明らかに調子を落としてきており、ポストシーズンに入ってからも何度も失点を繰り返しました。とどめは前述のイバネスの代打ホームラン。劇的弾を打たれたのはこのバルベルデ。不調の守護神を何とか蘇らせたいとタイガースの名将ジム・リーランド監督は考えたのかもしれませんが、結果はまったく裏目に出ました。おそらく今後タイガースが勝ち上がっても、バルベルデが点差の均衡したゲームで登板することはないでしょう。

打者に比べれば投手、それもクローザーにとって、プレーオフは選手生命まで縮めかねない大変な期間です。過去のプレーオフを見ると、大事な試合でセーブに失敗したクローザーが立ち直れないまま消えていった例は少なくありません。たとえば1993年フィラデルフィア・フィリーズのミッチ・ウィリアムスは、トロント・ブルージェイズとのワールドシリーズで2試合続けて逆転を許し、ファンからの批判が殺到。オフにトレードでフィリーズを去りますが、その後、剛腕の復活を見せることなく引退していきました。2001年アリゾナ・ダイヤモンドバックスのキム・ビュンヒュンはアンダースローから150km/h近い浮き上がる速球を投げましたが(与田剛さんもクローザーで、157km/hを記録しました)、彼もまたワールドシリーズのヤンキース戦で2試合続けてリリーフに失敗。その後は先発に転向したり、日本の楽天ゴールデンイーグルスにも入団しましたが、打者を圧倒したあの球威を取り戻すことはありませんでした。

プレーオフはとてつもない注目度とプレッシャーの中での戦いだけに、敗れたチーム、活躍できなかった選手のダメージも相当なもの。今季レギュラーシーズン最後の試合で負けて優勝を逃し、ワイルドカードゲームでもあっけなく敗れたテキサス・レンジャースは、打てなかったばかりか外野フライを落球するという信じられないエラーを犯したジョシュ・ハミルトン外野手が「戦犯」にあげられており、FA資格を得ることもあって退団が噂されています。たった一度のエラー、一球の失投のペナルティとしてはあまりにも厳しいですが、それが世界最高峰のリーグで戦うということなのでしょう。与田剛さんの解説で観戦すると楽しさも倍増です。


2012年10月14日日曜日

デレク・ジーターの快挙と悲劇と与田剛

皆さんこんにちは。
本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、ニューヨーク・ヤンキースの主将デレク・ジーターについて。

デトロイト・タイガースをヤンキースタジアムに迎えてのアメリカンリーグ優勝決定シリーズ第1戦。タイガースの4対0のリードで迎えた9回裏、ヤンキースは地区シリーズ第3戦で見せた驚異的な粘りを再び発揮します。ランナーを1人おいてまずイチローがライトスタンドにポストシーズン第1号2ラン。2点差。さらにランナーが1人出たところで打席には「奇跡の仕事人」ラウル・イバネス、まさかと思われましたがなんと!またしてもライトに同点本塁打を叩き込んだのでした。雰囲気はこのままヤンキースが逆転サヨナラするかと思われましたが、タイガースが延長12回表に勝ち越し、その裏を抑えてまず第1戦をとりました。

この試合で、ヤンキースは1敗以上の大きなものを失いました。12回表1死2塁、タイガースのジョニー・ペラルタの遊撃右のゴロをさばいたデレク・ジーターが右足をひねって転倒、最初は足がもつれただけかと思われましたが、彼が苦痛に顔を歪め、自分で立ち上がれない姿を見て観衆も声を失いました。すぐにジョー・ジラルディ監督とトレーナーが駆けつけ、ジーターは2人に肩を借りて退場、その後に足首の骨折という最悪のニュースが発表されたのでした。

同じ試合の中で、ジーターはポストシーズン200安打という前人未到の大記録を達成していました。すでに通算安打数では2位のバーニー・ウィリアムズに70本以上の差をつけて1位を独走していますが、2回にタイガース先発ダグ・フィスターから大台に乗せるライト前ヒット。ヤンキースがワールドシリーズまで勝ち進めばあと10本くらいは上乗せできそうなペースでしたが、快挙のわずか3時間半後にジーターのシーズンが終わってしまうとは、そのとき誰も予想だにしなかったでしょう。

ジーターは今季38歳にしてレギュラーシーズンで3割、200安打をクリア。ポストシーズンもペースを落とすことなくここまで3割を打ってきました。そればかりでなくヤンキースの主将としてコーチやチームメイトの人望も厚く、間違いなくチームの戦略の軸となる人物です。試合後、この日本塁打を打ったイチローが「今日は勘弁して」とコメントを避けたことからもショックの大きさが想像できます。精神的支柱を失ったヤンキースが逆に団結して巻き返すか、このまま敗退するのか、与田剛さんと一緒に注目しましょう。



2012年10月13日土曜日

日本つながりの選手で楽しむMLBプレーオフと与田剛

皆さんこんにちは。
本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、MLBのプレーオフ出場チームの中から日本とつながりのある選手を紹介します。

今年、メジャーリーグのプレーオフに出場した日本人選手はニューヨーク・ヤンキースの黒田博樹投手、イチロー外野手、そしてテキサス・レンジャースのダルビッシュ有投手、上原浩司投手。最近は日本人選手がプレーオフに出場するのが当たり前になったような感もありますが、これに「日本になんらかのゆかりのある選手」を加えるともっと多数になり、親しみも増して、観戦を楽しめるのではないでしょうか。

とりあえずリーグ優勝シリーズに残ったチームを見ると、ナ・リーグはサンフランシスコ・ジャイアンツのライアン・ボーグルソン投手。ボーグルソンは阪神タイガースで2年、オリックス・バファローズで1年プレーしました。成績は3年間の合計で11勝14敗と今ひとつでしたが、帰国後にジャイアンツで花開きます。2年連続13勝以上と立派にローテーションの一角を守っているほか、今回の地区シリーズではレッズに2連敗後の崖っぷちで先発して5回を1点に押さえる好投を見せました。

ア・リーグ、デトロイト・タイガースのプリンス・フィルダー一塁手は、阪神タイガースで1989年にプレーしたセシル・フィルダー一塁手の息子。当然その間は日本に住み、甲子園球場にも出入りしていました。お父さんは一年でメジャーに復帰し、タイガースで2年連続ホームラン王に輝き、その後はヤンキースでもプレーしました。今ビデオを見比べると、親子ともども巨漢ですが、お父さんのほうが背が高いですね。ちなみに「フィルダー」の表記は本来の英語発音が「フィールダー」であるものの、日本語で書いたときに間延びして見えるということで球団が縮めた形で登録したのだとか。その呼び方が息子にも流用されているというのも面白いものですね。

さて、すでに敗退してしまったチームにも日本にゆかりのある選手はいます。ボルチモア・オリオールズのルー・フォード外野手は2008年に阪神に所属しました。なんだか阪神に在籍した選手はメジャー復帰して活躍している選手が多いですね(与田剛さんも最後に所属したのは阪神で今はMLB解説者です)。しかしフォードは阪神在籍時は岡田監督にプレーを酷評されるなど、ほとんど実績を残せませんでした。帰国後はマイナーリーグや独立リーグでプレーしていましたが、今年オリオールズと契約して7月に5年ぶりにメジャー復帰。出場試合は少ないものの勝負強いバッティングでプレーオフメンバーに選ばれ、4試合に出場して打率3割、打点1をあげました。オリオールズにはもう一人、チェン・ウェインという日本経験者がいます。チェンは昨年まで中日ドラゴンズに在籍しましたから、知っている方も多いでしょう。

最後は選手ではありませんが、ワシントン・ナショナルズのデイビー・ジョンソン監督。ジョンソンも日本でプレー経験はあるのですが、1975年と76年ですからもう35年以上も前。若い方はフィルダーの(お父さんの)名前は覚えていてもジョンソンに関しては「そんな人もいたの?」という感じでしょうか。ジョンソンは長嶋茂雄氏が監督一年目の読売ジャイアンツに入団。来日前、メジャーではオリオールズで新人王獲得、アトランタ・ブレーブスで当時二塁手として最多の43本塁打を放つなど、日本のプロ野球に初めてやってきた「バリバリ現役のメジャーリーガー」でした。しかし日本の野球になかなか適応できず、一年目は打率1割台、2年目にようやく打率.275、26本塁打を記録しますが、本来の実力を発揮したとはとても言えないものでした。引退後は監督として手腕を発揮、1986年に「ミラクル・メッツ」と呼ばれたニューヨーク・メッツをワールドシリーズ優勝に導き、1995年はシンシナティ・レッズ、1997年はオリオールズで地区優勝を果たします。そして2011年途中から指揮を執っているナショナルズは今季地区優勝、メジャー以外でも2009年WBCのアメリカチームの監督も務めるなどメジャー指折りの名監督として評価されています。

こういった選手や監督に注目しながら残りのプレーオフを楽しむのはいかがでしょうか。与田剛さんの解説なら最高です。


2012年10月12日金曜日

すべて第5戦までもつれた地区シリーズと与田剛

皆さんこんにちは。
本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、熱戦が続くメジャーリーグのポストシーズンの途中経過をお伝えします。

今年のプレーオフは面白い!と、ほとんどのMLBファンが思っていることでしょう。なんといってもスイープ(どちらか一方のチームが負けなしで勝ち上がること)がありません。地区シリーズは5回戦で3勝したら勝ち抜けですが、緒戦、第2戦と連勝したチームはそのまま3戦めも勝つことが多く、短期決戦で勢いに乗ったチームを止めるのは至難の業。しかし、今年は違いました。ナショナルリーグ、シンシナティ・レッズ対サンフランシスコ・ジャイアンツはレッズがまず2連勝、しかし土俵際からジャイアンツが3連勝して大逆転。第5戦では今年大ケガから復帰した若き主砲バスター・ポージーが満塁本塁打を叩きこむ大活躍で、リーグチャンピオンシップ一番乗りを決めました。両チームの勝利がすべて敵地主催ゲームという珍しい記録も生まれました。

アメリカンリーグ、デトロイト・タイガース対オークランド・アスレチックスはタイガースが2連勝したものの、アスレチックスが2連勝でタイに持ち込みます。第4戦はアスレチックス打線が9回裏にタイガースの守護神ホゼ・バルエルデを打ち込んで2点差を一気にひっくり返してサヨナラ勝ち。レギュラーシーズン最終カード、テキサス・レンジャース相手に奇跡の3連勝を果たした勢いの再来かと思われましたが、第5戦はタイガースのエース、ジャスティン・バーランダーが4安打完封の仁王立ち。大試合に弱いと言われたバーランダー、今年は大丈夫なようです。それよりクローザーのバルベルデが今後使えるのか?心配です・・・。

残る枠は各リーグ1チームずつですが、ア・リーグのニューヨーク・ヤンキース対ボルチモア・オリオールズ、ナ・リーグのセントルイス・カージナルス対ワシントン・ナショナルズはともに2勝2敗で5戦目に勝負は持ち越されています(カージナルス対ナショナルズは与田剛さんの解説でした)。それにしても、第3戦のヤンキースは神がかり的でした。9回裏、不振のA-Rodことアレックス・ロドリゲスに代えてジョー・ジラルディ監督がラウル・イバネスを打席に送ると、守護神ジム・ジョンソンから見事同点ホームラン。そして12回には同じイバネスが今度は左腕ブライアン・マティスからサヨナラホームランを放つ離れ業。2本のホームランはいずれも初球を叩いたもので、わずか2球で試合を決めた仕事人ぶりは今後も伝説として語り継がれることでしょう。そしてこちらもクローザーが不振、第5戦でオリオールズはジョンソンを使えるのでしょうか。

さあ、リーグチャンピオンシップに勝ち残るのはどこか。日本人としてはやはり黒田、イチローのいるヤンキースを応援したいところ。与田剛さんの解説で楽しみたいものです。


2012年10月9日火曜日

与田剛さん、WBCコーチに決定!

いつもはMLBの話題を書いているこのブログですが、今日は私が大ファンの与田剛さんのニュースです。来年開催されるWBC(ワールドベースボールクラシック)の日本チームのコーチに与田剛さんが決定しました。

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来年3月の第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場する侍ジャパンに、与田剛氏(46=元阪神)と緒方耕一氏(44=元巨人)が入閣することが8日、分かった。与田氏、緒方氏ともに前回09年のWBCでもコーチを務め、監督就任が決まっている山本浩二氏(65)の指揮下で、その経験を3連覇に向けて生かすことになる。    

「山本浩二ジャパン」の全容が出そろった。与田氏は前回大会でブルペンを担当。選手とベンチとのパイプ役として投手陣の奮闘を支えた。今回も投手コーチに就任する。解説者としてのメジャー取材の経験も豊富で、その知識も侍ジャパンには不可欠といえる。今回は東尾修氏とのコンビとなるが、再びブルペンを担当することになる。
(ニッカンスポーツ)

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元阪神とありますが、ファンの記憶の中の与田剛さんは中日ドラゴンズのクローザー。最後に所属したチームが書かれる新聞社のルールなので仕方ありませんが。

いずれにせよ、前回大会でも侍ジャパンのブルペンを預かった与田剛さんが、今回もコーチとして参加するとは心強いですね。何よりメジャー取材で選手や球場の知識が豊富です。現代の野球は情報戦ですから、与田剛さんの存在は何より大きいはず。来年の春が待ち遠しいですね!

2012年10月8日月曜日

A'sのユニフォームの小さなワッペンと与田剛

皆さんこんにちは。
本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、現在プレーオフを戦っているオークランド・アスレチックスのユニフォームの右袖についている小さなワッペンについて。

黒い布の上に白地で「GJN」と書かれたこのワッペンは、実は喪章。先日亡くなってしまったアスレチックスのパット・ネシェク投手の息子のイニシアルを表しています。MLBチームがユニフォームにこのようなワッペンをつけるのは特に珍しいことではなく、2010年のニューヨーク・ヤンキースなど、同年亡くなったラルフ・ホーク元監督、ジョージ・スタインブレナー元オーナー、そしてヤンキースタジアムのアナウンサーであったボブ・シェパード氏の3つの喪章をつけてシーズン終了までプレーしたことがあるくらいです。

詳細は発表されていませんが、ネシェク投手とステファニー夫人の第一子は、アスレチックスがテキサス・レンジャースと地区優勝をかけて戦っていたさなかの10月2日に誕生。ネシェクはわが子をメジャーリーグの名選手にあやかった「ゲーリッグ・ジョン」と名づけますが、しかしその子は生後わずか23時間でこの世を去ってしまいます。

しばしば日本でも話題になりますが、家族の誕生や死去といった出来事があれば、メジャーリーガーは(監督やコーチも含め)どんなに大事な試合があろうと家庭を優先します。もうずいぶん前の話ですが、日本のプロ野球チームに所属したアメリカ人選手が息子の手術のために試合を休んだところ、大事な試合を放棄したと非難されたことがありました。家族を大事に思う気持ちは日本人も同じでしょうが、仕事と違って家庭に自分の代役はいない、家族のためにすべてをなげうっても尽くすという感覚には、日米の差は大きいように思えます。

家族を失った悲劇の直後、選手は仕事を休んでも非難されることはないでしょう。しかし、ネシェクはプレーオフを戦うためにチームに戻りました。アスレチックスは彼の息子の死を悼んで、喪章を袖に着けて試合に臨んでいるのです。そしてデトロイト・タイガースとのプレーオフ第一戦、7回のピンチに登板したネシェクは、見事に2人の打者を打ち取ってタイガースの追加点を阻止。オースティン・ジャクソンを三振にとってベンチに小走りに帰るとき、ネシェクは左手で右肩の喪章をポンポンと数回たたきました。それが何を意味しているかを理解している満員の観衆は、ネシェクに惜しみない拍手を贈ったのでした。

ところで、ネシェクはメジャーでは珍しいアンダースローの投手。今季は24試合に登板して防御率1.37と活躍しました。プレーオフはまだまだ続きます。ぜひ与田剛さんの解説でワールドシリーズで投げるところを見てみたいものです。



2012年10月7日日曜日

チッパー・ジョーンズ最後の試合と与田剛

皆さんこんにちは。
本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、今季限りで引退するアトランタ・ブレーブスのチッパー・ジョーンズ三塁手です。

昨日行われたナショナル・リーグのワイルドカードゲーム。今季から2枠になったワイルドカードのチームの対戦が1試合だけ行われ、勝者が地区優勝チームと対戦するトーナメントに残れるという、まさにサドンデスの戦いです。今季のナ・リーグのワイルドカードはブレーブスとセントルイス・カージナルス。今年のブレーブスはいつにも増して気合が入っていました。なんといっても、20年間ブレーブス一筋に活躍してきたジョーンズの最後のシーズンなのです。負ければジョーンズ最後の試合となるだけに、一試合でも、一打席でも多くジョーンズの雄姿を目の前で見たいとファンもチームメイトも願っていました。

しかし、試合はジョーンズにとってほろ苦いものとなりました。ジョーンズは4回の守備で強いサードゴロを好捕したものの二塁に悪送球。点差を広げられるきっかけを作ってしまい、また思いもよらぬインフィールドフライの「疑惑の判定」もあってブレーブスが後味の悪い敗戦を喫してしまいます。

あっけなく試合は終わってしまいましたが、ジョーンズの最後の打席は感動的でした。3点差で9回裏ツーアウト走者なし。もう試合はほぼ決まっていたとはいえ、すべての観衆がスタンディングオベーションで自分たちの英雄を打席に迎えたのです。ある者はブレーブスの応援グッズである「トマホークチョップ」を振り、ある者はハンカチを振り、ある者は手書きのメッセージボードを掲げました。普段ならスター選手が登場するとカメラのフラッシュがあちこちで光るものですが、このときはそれがありませんでした。ほとんどの観客が拍手を贈っていたからです。ジョーンズはヘルメットを片手で取って少し照れたように伏せ目がちに高く掲げ左打席に入りました。

マウンドにはカージナルスの守護神ジェイソン・モット。ジョーンズはカウント2-2から150km/hの速球を打ち返します。センター前に抜けるかと思われた打球は二塁手が俊敏な動きでキャッチして一塁にジャンピングスロー。タイミング的にはアウトでしたが、一塁手の足が一瞬ベースを離れ、内野安打に。これが、ジョーンズ最後の打席、最後のヒットでした。

ジョーンズの名前が日本でも知られたのは、1995年、メジャーで旋風を巻き起こした野茂秀雄投手の新人王のライバルとして紹介されたときでしょう(与田剛さんも日本で新人王を獲りましたね)。結局新人王は野茂に譲ることになりましたが、ジョーンズは野茂よりもずっと長くメジャーで活躍することになりました。1999年にMVPを獲得、この年「打率3割・40二塁打・40本塁打・100四球・20盗塁」を史上初めて達成、2008年には首位打者に輝きました(シーズン記録はいずれもナ・リーグ)。通算468本塁打はスイッチヒッターとしてミッキー・マントル、エディ・マレーに続く3位。しかし終身打率が3割を超えているのはジョーンズ一人です。引退後の「殿堂入り」、そして背番号10がブレーブスの永久欠番になることはほぼ間違いないでしょう。

ひとつのチームでキャリアを終える選手がほとんどいなくなったMLB。ジョーンズの引退後はニューヨーク・ヤンキースのデレク・ジーターが最後の一人になるのではないかと言われています。実力ある選手ほど移籍する可能性が高いのがプロの世界ですが、ファンはできればいつまでも同じチームにいてほしいと思うもの。ジョーンズの引退にアトランタばかりでなくすべての野球ファンからねぎらいの声が寄せられているのを見るとそんな気がします。与田剛さんはどのような感想をもつでしょうか。

2012年10月6日土曜日

アメリカン・リーグのドラマチックな幕切れと与田剛

皆さんこんにちは。
本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、今季最終戦で2地区の優勝が決まったアメリカン・リーグの話題です。

昨年も最後の一日で優勝が決まる大興奮のシーズンでしたが、今年もまたそれをしのぐようなドラマが待っていました。与田剛さんも手に汗を握って観戦したことでしょう。

プレーオフ進出チームが一足早く出そろったナショナル・リーグに対して、最後の最後まで優勝が決まらなかったアメリカン・リーグ。残り数試合を残した段階で、東地区は首位を走っていたニューヨーク・ヤンキースにようやくボルチモア・オリオールズが勝敗数でならび、同率首位に。西地区はほぼデトロイト・タイガースが首位を固めて安泰になってはいましたが、ミゲル・カブレラが45年ぶりに三冠王になるかどうかが注目を集め、そして西地区は春先に2位に13ゲームの差をつけて独走態勢にあったテキサス・レンジャースをオークランド・アスレチックスが猛追。直接対決となる最後の3連戦で、レンジャースは一つ勝てば優勝、アスレチックスは3連勝すれば優勝という、これ以上ない舞台設定となりました。そして最終的に、シーズン最終戦でヤンキースとアスレチックスが地区優勝を決め、カブレラは見事に三冠王に輝いたのです。

ヤンキースとオリオールズは直接対決がなかったため、最終戦のボストン・レッドソックスとの試合中にオリオールズが敗れ、ヤンキース優勝(ちなみこの試合は先発投手がヤンキース黒田博樹、レッドソックス松坂大輔という日本人対決、解説は与田剛さんでした)。今季途中から移籍してきたイチローは11年ぶりのシャンパンファイトを体験。とはいえ、地区優勝くらいでは大げさに騒がないのがヤンキースらしいと言えるでしょうか。

レンジャース対アスレチックスの3連戦はとんでもない結末となりました。すでにどのような結果になろうとも両チームともプレーオフ進出は決まっていましたが、今季からワイルドカードが2チームになり、その2チームで1試合だけの対戦をしなければなりません。その間、地区優勝チームはゆっくり休養して勝者が決まるのを待っていられるわけですから、優勝とワイルドカードでは天と地ほど差があると言っても良いくらいです。アスレチックス戦の前のロサンゼルス・エンゼルス戦、第2戦で先発ダルビッシュ有投手が好投したものの救援陣が打たれ、勝ち試合を落としてしまったレンジャース。今思えばこの負けが、何勝にも値するほど重いものになってしまいました。かたや、シアトル・マリナーズ3連戦を3連勝してレンジャースを待っていたアスレチックス。勢いの差は歴然でした。

この時点でもレンジャースは「あと一つ勝てば優勝」と数字的には優位に立っていました、しかし、その一つをどうしても取ることができません。象徴的だったのが2連敗して迎えた最終戦、序盤リードしながらジョシュ・ハミルトン外野手がフライを落球するという信じられないエラー。これで逆転を許し、結局アスレチックスは点差を広げて余裕の勝利。今季初めて首位に立った日が最終日で、そのまま優勝決定というドラマのような幕切れでした。前回も書きましたが、アスレチックスの年俸総額はメジャー最低、ヤンキースの約4分の1です。主力選手をオフに放出し、ほとんど無名の新人ばかりの格安集団が地区優勝を飾るという、まさに「マネーボール」でチームスポーツの醍醐味を堪能させてくれました。

今日からプレーオフ。優勝を逃して意気消沈したレンジャースがいかにオリオールズと戦うか。先発は後半エース級の働きをしたダルビッシュ。与田剛さんの解説で見てみたいものです。


2012年10月3日水曜日

「マネーボール」のアスレチックスと与田剛

皆さんこんにちは。
本日の与田剛ファンの気まぐれブログは、今季予想に反する大躍進でプレーオフ進出を決めた
オークランド・アスレチックスの話題です。

昨年公開されて話題を呼んだ映画「マネーボール」、あなたは見ましたか?与田剛さんはきっと見たでしょうね。オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャー(GM)ビリー・ビーンがいかにして安い給料の選手を集めて強いチームを作ったかを書いた著書を映画化したもので、ブラッド・ピットがビリー・ビーン役を務めました。

MLBが舞台の映画はたくさんありますが、その多くは「メジャーリーグ」シリーズや「オールド・ルーキー」「ナチュラル」のようにスカッとして感動する「王道」路線。「マネーボール」はどちらかというとチームづくりという裏方にスポットを当てた作品で、いわゆるスポーツ映画を当てにして映画館に入った人は、肩すかしを食った気分になったかも知れません。

この「マネーボール」、思い切り簡単に要約すると、給料が安い若くて有望な選手をかき集め、その選手が成長したら、給料がハネ上がる前に他チームにトレードに出し、見返りにまた安くて有望な選手をもらうというチーム戦略。言うだけならば簡単ですが、それを成功させるにはまだ芽が出ていない(他チームでは評価されていない)ながらも成長の余地のある選手を的確に見つける鑑識眼が必要になります。打者ならばその目安となるのが打率よりも出塁率なのですが、これを詳しく説明しているととてもここでは収まりませんので以下省略。

とにかくこの戦略のおかげでアスレチックスの年俸総額はメジャー30チームの中で最低。しかし今年はプレーオフ出場を決め、最終カードとなるテキサス・レンジャース3連戦をスイープ(3連勝)したら同率で優勝となるところまで来ているのですから、年俸数億円の一流選手を抱えて下位に沈んでいるチームは、さぞ恨めしげにアスレチックスの健闘を見ていることでしょう。

アスレチックスの昨オフの「在庫一掃セール」ぶりは大変なものでした。先発で12勝のトレバー・ケイヒルをアリゾナ・ダイヤモンドバックスに、16勝のジオ・ゴンザレスをワシントン・ナショナルズに、守護神で24セーブのアンドリュー・ベイリーをボストン・レッドソックスに、野手では28本塁打98打点のジョシュ・ウィリンガムをミネソタ・ツインズに惜し気もなく放出。もちろん見返りに若い有望選手をたくさん獲得したわけですが、先発ローテーション2人とクローザーと主軸打者がいきなりいなくなったのですから、ファンは「今年は再建モードだな」と諦め顔で開幕を迎えたに違いありません。(アスレチックスの場合は数年ごとに再建モードになるので慣れっこでしょうが)

ところがフタを開けてみればベイリーの見返りにもらったジョシュ・レディック、キューバから亡命したヨエニス・セスぺデスの両外野手が大活躍。投手もここ数年低調だったかつての20勝投手バートロ・コロンが移籍してきて再生したほか、去年まで無名の若手が急成長し、見事に穴を埋めました。しかもコロンが8月に薬物違反で出場停止になり、今季の開幕投手ブランドン・マッカーシーが打球を頭に当てて入院するなどのアクシデントがあったにもかかわらず、ペースを落とさないまま10月まで来たのですからチーム力も本物です。

そんなアスレチックスの唯一の悩みはお客が少ないこと。たしかにいくら強くても、選手がすぐに出て行ってしまうチームはあまり思い入れができないのかもしれませんね。ともあれ、「格安球団」がプレーオフでどこまで勝ち上がるか、与田剛さんの解説で見てみたいものです。